気候変動への対応

2015年のパリ協定採択を機に気候変動問題に関する世界的な関心が急速に高まる中、綱領において「社会の発展に寄与すること」を使命とする当社は、2016年に環境方針を改定し、CO2排出量削減や環境負荷低減に貢献する商品の普及を通じた社会の発展と、気候変動問題をはじめとする環境問題解決の両立を目指しています。

2022年11月には、「気候関連財務情報開示タスクフォース」(Task Force on Climate-related Financial Disclosure:TCFD)が公表した最終報告書への賛同を表明しました。気候変動が経営にもたらす「リスク」「機会」について特定・分析・評価するとともに、株主・投資家をはじめとするステークホルダーの皆さまとのエンゲージメント(建設的な対話)に資する情報開示の質と量の充実に取り組んでいます。

ガバナンス

2022年10月開催の取締役会において、サステナビリティ推進委員会の設置を決議し、2023年4月より本格稼働を予定しています。当社グループは気候変動対応を含む「ESG経営」に関する事項について、「サステナビリティ推進委員会」で上程、報告、情報提供を行います。また、取締役会の定期的な監督を受けます。
取締役会では、中期経営計画などのレビューや投資などの判断の際に、気候関連問題を考慮して決定を下します。

※サステナビリティ推進体制については、サステナビリティマネジメントをご参照ください。

リスク管理

サステナビリティ推進委員会が気候変動に関するリスクの識別・評価、管理を行います。
シナリオ分析において、関連するパラメータを抽出してリスクを識別し、定期的に評価を実施します。また、各リスクの財務的インパクトを定量的に評価することで、リスクの管理を行います。
今後は、シナリオ分析におけるリスク評価の結果をリスク統括担当部門へ報告し、全社のリスク管理と連携させていきます。

戦略(シナリオ分析概要)

シナリオ分析概要

当社グループでは、シナリオ分析を通じ、IEAなどの科学的な情報に基づく1.5℃/4℃シナリオにおける2030年、2050年での当社グループとお客さまの業界への変化を把握し、気候変動リスク・機会を分析しました。今回の分析で使用したシナリオのいずれにおいても、分析対象事業ではレジリエントな経営を行うことが可能と確認しました。
1.5°Cシナリオでは、脱炭素化に向けて政策の大きな変化が想定され、炭素税の導入に加えて原材料価格やエネルギーコストの高騰、より脱炭素なビジネスモデルへの転換が求められます。一方で4℃シナリオでは物理的リスクの影響が高まり、工場停止やサプライチェーンの断絶といったリスクへの対応が必要となります。

シナリオ分析結果

前項の1.5℃上昇の将来社会像を踏まえ、当社グループでは省エネ製品の需要増加によるビジネス機会が大きくなる一方で、4℃では物理的リスクの影響が大きくなると認識しています。
これらの分析結果を踏まえ、当社グループは認識したリスクに対処しながら機会を最大化するための取り組みを実現性の高いものから順次検証し、経営戦略への反映・統合を推進していきます。

機会 機会の詳細 重要度 対応策
大分類 中分類 1.5℃ 4℃
省エネ製品などの開発 省エネ推進製品 省エネ政策や気温上昇に伴い、お客さまの工場で電動化と自動化が進み、工場・設備の生産性向上および省エネ性能を高める製品需要が増加
  • すでに一部地域で開始済みの部品・リペアパーツの現地での製造・販売や生産拠点集約などの地産地消ビジネスモデルの拡大
  • 環境に配慮したエコ電動化製品の導入や軽量性や長寿命性を考慮した製品の設計・開発 など
省人化需要 気温上昇による労働生産性低下に伴い、生産現場の省人化や効率化が求められ需要が増加
  • 自動倉庫・無人搬送車向け製品の開発 など

移行リスク

リスク リスクの詳細 影響度 対応策
大分類 中分類 1.5℃ 4℃
炭素価格 Scope1、2 各国の炭素税、排出量取引の導入や国境炭素調整措置の導入による製造コストが増加
  • カーボンニュートラル宣言などの炭素排出削減目標設定
  • 炭素排出量のスコープ構成の把握やモニタリング体制の構築 など
原材料コスト 希少資源 排出規制により、原材料および仕入れ購入品に制限がかかり調達コストが増加
  • 老朽化したロボットのリニューアルなど、改造・修理サービスを通じて装置・部品のリユースやリサイクルを推進 など
プラスチックコスト 規制による利用制限や再プラの利用要請によりプラスチックを利用した材料コストが増加
  • 製品梱包における過剰梱包の見直しとともに、再生紙や通い箱への代替を通じた使用プラスチック量の削減 など
エネルギーコスト 電力コスト 自社工場・オフィスの脱炭素化や再生可能エネルギー普及により電力コストが増加
  • LED照明の導入など省エネ推進
  • 自家発電設備(太陽光発電設備)の導入やリースサービスの活用を検討
  • すでに導入・検討をしているビル・工場からEnergy Management Systemによる最適運転導入および、未導入箇所への順次拡大 など
空調コスト 気温上昇により工場などの空調稼働率が上昇し、空調コストが増加
  • 換気見直し、エア漏れ対策、空調室外機の日除け対策などの運用改善
  • 省エネ空調設備の導入 など
物流コスト 大型車のEV化による物流コストが増加
  • 一部の事業で実施している共同輸送に関し、生産拠点集約やお客さま(OEM)との取り組みを拡大し工場間輸送効率化
  • 地域内サプライヤーさまへの巡回集荷による物流の合理化の拡大を検討 など

物理的リスク

リスク リスクの詳細 影響度 対応策
大分類 中分類 1.5℃ 4℃
物理的コスト 復旧・操業コスト 異常気象の影響による設備の復旧費用などのコストが増加
  • 複数購買によるリスク低減の実施
  • 供給が停止した場合にも一定の生産活動ができるよう事業内容に沿った先行手配や適切な在庫管理と運用の徹底 など

指標と目標

CO2排出量削減による地球温暖化抑止は、持続可能な社会の実現のために必須の活動となっています。その責任を全うすべく、当社グループでは事業活動におけるCO2排出量の削減策を推進しています。また、事業活動における環境負荷低減の目標として、2021年4月に日本政府が表明した温室効果ガスの削減目標を参考としつつ、より踏み込んだグローバル中長期目標を検討しています。今後は、シナリオ分析におけるリスクおよび機会の項目から当社グループにとって重要となる指標を精査し、CO2排出量(Scope1、2、3)の実績把握を実施していきます。